主婦の休業損害

休業損害

 休業損害は,交通事故による収入の減少を補填するものです。

 主婦の家事労働は実際にそれによって配偶者からお金をもらえるわけではありませんが,交通事故の損害賠償の場合は経済的に評価できるものと考えられており,主婦の場合も「交通事故による受傷によって家事労働に従事できなかった期間」について休業損害が認められます。

 休業損害の基本的な計算式は「1日あたりの基礎収入 × 休業日数」となります。家事労働は家の外から見えるものではないため,休業日数の点について争いが生じることも多いですが,ここでは「1日あたりの基礎収入」について任意会社基準と裁判基準の違いについて説明します。

 「任意会社基準」による示談案の場合,主婦の1日あたり基礎収入は6100円(2020年3月31日以前の事故の場合は5700円)で計算して提示されることが多いはずです。これは,自賠責保険の支払基準で定められた金額です。

 一方,弁護士が代理人となった後に適用される「裁判基準」による場合,1日あたりの基礎収入は交通事故の年にもよりますが,およそ10500円程度で計算されることになります。これは,賃金センサスの女性労働者の平均賃金額を基礎として家事労働を経済的に評価するためです。

 パートタイマー,内職等の兼業主婦については収入がありますが,この場合であってもおよそ10500円を1日あたり基礎収入として計算することになります(もちろん,収入額がこの金額を上回る場合,収入額によって算定されます。)。

 もっとも,弁護士介入前の任意保険会社の示談案では,有職の主婦の場合に実際の年収(家事労働者としての計算よりも低いもの)で計算されていることも多いようです。

 これは,休業損害のみでなく,後遺障害がある場合の逸失利益でも基本的に同様に考えられています。